歩行のリハビリ方法とは?リハビリで行う歩行訓練の種類4つについて

「歩行を改善するために、どのような方法でリハビリをすればいいか知りたい」

「歩行訓練におけるリハビリの進め方や介助方法を具体的に知りたい」

「歩行困難な患者さんに対して、歩行に必要な筋肉をリハビリによって回復させたい」

など、歩行のリハビリ方法に悩みを抱えるセラピストは多いと思います。

患者さんの歩行能力を向上させるために、どのような方法でリハビリを進めていくのがベストなのでしょうか。

この記事では、そんな悩みを解決すべく、リハビリが必要な歩行状態や歩行訓練の4種類など、歩行のリハビリ方法についてご紹介致します。

歩行のリハビリ方法について

歩行のリハビリにおいて最も大切なことは、患者さんの歩行を正確に評価することです。

正確に歩行の評価ができていれば、歩行の問題点が明確になります。。

歩行の問題点が明確になった後、その問題点に適した訓練(今回ご紹介する歩行訓練の4種類)を進めていく、これが歩行のリハビリ方法です。

正確な歩行の評価ができていない場合どうなるのか、極端な例を1つ挙げて説明します。

背屈の可動域制限が問題で、つま先が地面に引っかかって転倒しやすい人がいるとします。

しかし、「問題点は筋力低下だ」とセラピストが思い込んで筋力訓練ばかりしていたとしたら、患者さんの歩行は一向に改善されません。

このように、患者さんの歩行を正しく評価することは最も基本であり、重要なのです。

リハビリが必要な歩行状態とは?

リハビリが必要な歩行とは、どんな状態を示すのでしょうか。

社会生活や日常生活において歩行に介助を要す状態、歩行中に転倒の危険がある状態は、リハビリが必要な歩行状態であると言えます。

また、今以上の歩行改善は難しいと思われる状態でも、補助具や装具を利用することにより、歩行自立が見込まれる場合、リハビリによる訓練や指導が必要となります。

歩行は自立している状態でも、リハビリをすることによって、さらに歩行能力の向上(スピードアップ疲れにくい歩き方の獲得など)が見込まれる場合もあります。

リハビリで行う歩行訓練の種類4つ

近年、歩行のリハビリテーションにおいて、特殊な手技や難しい名前の訓練方法などを散見しますが、セラピストが行う基本的な歩行訓練は、これから説明する4つにまとめることができます。

ややこしく考えず、基本の4種類の歩行訓練をしっかり実践していくことが大切です。

歩行に必要な筋肉を回復させる

まずは、歩行に必要な体の土台作りをする必要があり、そのための1つが筋肉の回復です。

歩行周期のどのタイミングでどの筋肉が必要なのかを理解しておかなければなりません。

そして、問題となっている患者さんの歩行において、回復させる必要のある筋肉はどこなのかを統合して訓練していく必要があります。

また、筋肉が回復する経過を理解しておくことも重要です。

筋肉の回復経過について、例を挙げて説明します。

歩行障害のない人が手術等で3日間のベッド上寝たきり生活を送った場合、4日目に歩こうとした瞬間、膝から崩れて歩くどころか立つことすら不安定になってしまいます。

これは「廃用」の筋力低下であり、筋肉の回復は1週間程度で元通りになります。

つまり、3日間という短期間で生じた筋力低下は、短い期間で回復が可能です。

しかし、加齢によって徐々に生じた筋力低下や、麻痺によって筋肉が働きにくい場合などは、筋肉の回復に時間がかかってしまいます。

リハビリでは、どの筋肉にどのくらいの負荷をかけて訓練していくかが重要と言えます。

関節の可動域を広げる

歩行に必要な体の土台作りの2つ目が、関節の可動域を広げることです。

関節の可動域を広げること、つまり関節の動く範囲が広く柔軟であることが大切です。

関節の可動域が狭いと、柔軟性が低下し、滑らかな歩行ができなくなってしまいます。

また、痛みが生じやすくなったり、関節への偏った負荷により将来的に歩行困難になってしまう可能性もあるのです。

問題となっている患者さんの歩行において、どこの関節可動域をどこまで広げるべきなのかを考える必要があります。

そのためには、体の各関節における正常可動域を理解しておくことが基本です。

そして、歩行周期のどのタイミングでどのくらいの関節角度が必要となるかを把握しておくと、歩行分析が捗ります。

注意点として、関節可動域が正常よりも極端に広いことによる歩行障害も存在するため、あくまでも目の前の患者さんの歩行を正しく評価することが大切です。

平行棒や手すりなどを利用して歩行する

平行棒や手すりを利用して歩行することは、特に歩行のリハビリ開始時に必要となります。

脳卒中や骨折などにより歩行障害が生じた場合、すぐにフリーハンドで歩行することは難しい場合が多いと思います。

脳卒中で片麻痺が生じた場合、急性期では抗重力位での訓練を早期に始めることが重要であり、そこで活躍するのが手すりです。

初めは何も持たずに立ったり歩いたりはできないけれど、健側で手すりを持ち体を支えることで、補助的な役割として利用することができます。

骨折の場合は、術後すぐは骨折した足に体重を乗せることは禁忌であり、経過とともに徐々に体重の何%を荷重していくというように治療が進んでいきます。

そこで活躍するのが平行棒であり、体重の負荷を上肢でコントロールするのに利用します。

脳卒中や骨折の例を挙げましたが、他にもさまざまな障害で平行棒や手すりを使います。

また、家の移動範囲に手すりを設置することで移動が安全に可能となるケースは多く、積極的に利用すると良いでしょう。

しかし、日常生活で平行棒を常に利用して歩行することは現実的ではありません。

なぜなら、平行棒は地面に固定されており、移動範囲が限られるからです。

平行棒や手すりを利用しての歩行は、リハビリを行う上で必須となる場合が多いです。

ただし、患者さん個人の能力によるので一概には言えませんが、将来的には平行棒や手すりを卒業できると、より社会生活の中での歩行獲得が可能となります。

器具や装具を利用して歩行する

器具や装具を利用して歩行することは、歩行の能力(自立度)を上げるのに必要です。

器具について言えば、例えば歩行器などの歩行補助具の場合、平行棒や手すりとは違って壁や地面に固定されていないため、移動範囲が広がり、自由度が上がります。

腰痛のある患者さんや、腰の曲がった高齢者など、押し車を利用して歩行することによって、歩行能力は大幅に改善するケースは多いです。

片麻痺の患者さんが、杖を利用することによって歩行が安定し、介助が必要なくなるケースも多いです。

装具について言えば、片麻痺による尖足や、腓骨神経麻痺による下垂足が生じた場合、短下肢装具を利用することで、つま先の引っ掛かりが減り、転倒のリスクが改善されます。

加齢による歩行中のつまずきも、背屈促進靴下により転倒リスクを減らすことが可能です。

このように、器具や装具は歩行能力をアップさせる役割があるのです。

器具や装具は、一時的に利用する平行棒とは違い、将来的にも常に利用する可能性が高いのが特徴です。

そのため、器具や装具を患者さん自身で装着することができるかが重要となります。

リハビリの中で、器具や装具を装着する練習も同時進行で行っていく必要があります。

無理せず一歩ずつリハビリする

リハビリで歩行訓練を行う時、「思うように改善しない」「痛みが長引いてリハビリが進まない」と悩み、壁にぶち当たることは少なくありません。

患者さんの「私は歩けるようになるの?」「リハビリはいつまでかかるの?」という問いかけに、即答できないことも多々あると思います。

そんな時、つい焦ってリハビリが過負荷になってしまったり、患者さんに無理をさせてしまって危うくインシデントを起こしそうになったり。

このような状態は絶対に避けなければなりません。

セラピストの焦りは、患者さんにも伝わってしまいます。

患者さん個々の心理状態をしっかり把握し、無理せず一歩ずつリハビリをすることを心がけましょう。

まとめ

歩行のリハビリ方法として、患者さんの歩行を正しく評価することの重要性、歩行訓練の4種類における具体的なリハビリの進め方、訓練をする上で必要とされる心がけなどをご紹介させて頂きました。

歩行のリハビリは、評価をしながら訓練を進めることが大切です。

常に歩行分析を行い、必要に応じてリハビリ内容を修正したり、患者さんの心理状態も配慮しつつ訓練を行っていくことが重要です。

明日からの臨床において、1つでも参考になれば幸いです。

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歩行推進力とその改善方法
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歩行推進力とその改善方法 著者:佐藤洋平(EHA監修)
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