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なぜ“つまずき”が増えるのか?歩行分析で見つける転倒リスクの原因

なぜ“つまずき”が増えるのか?歩行分析で見つける転倒リスクの原因

「最近、平らな場所でもよくつまずく」「段差でもないのに足が引っかかる」——こうした経験が増えてきたとしたら、それは決して「気のせい」ではありません。

つまずきは偶然の出来事ではなく、歩行中の足の上がり方(クリアランス)の乱れ筋力・バランス能力の低下が積み重なって起きる、予測・予防可能なリスクです。歩行分析によってつまずきの原因を客観的に特定し、転倒を防ぐための具体的なアプローチが取れる時代になっています。

今回は、つまずきが増える仕組みと歩行分析で見つかる転倒リスクの原因、そして現場で活かせるリハビリ評価のポイントについて詳しくご説明します。

なぜ「つまずき」が増えるのか ― その仕組みを理解する

つまずきとは、歩行中に足先が床や障害物に引っかかる現象です。その根本には、トゥークリアランス(Toe Clearance)という概念があります。

トゥークリアランスとは、遊脚期(足を前に振り出す局面)における「つま先と床面の距離」です。平地歩行における正常なトゥークリアランスは約1〜2.4cmの範囲とされています。このわずかな距離が確保できなくなると、床面に足先が引っかかり、つまずきが発生します。

重要な研究知見として、高齢者のトゥークリアランスの平均値は若年者と差がないことが示されています。しかし「ばらつき(変動の大きさ)」に有意な差があることが分かっています。つまり高齢者は、「常に低い」のではなく「歩行周期によって高い時と低い時のばらつきが大きい」ため、クリアランスが低い瞬間に偶発的につまずきが起きているのです。

(引用;歩行時のクリアランス低下の原因と改善について解説! | 歩行分析システム AYUMI EYE
(引用;つまずきによる転倒に関連するクリアランスの研究 | 日本転倒予防学会誌 Vol.9

歩行分析で明らかになるつまずきの3大原因

歩行分析によってつまずきの原因を特定することで、個別に対応した介入が可能になります。主な原因は以下の3つです。

① 腸腰筋・股関節屈筋の筋力低下

足を前に振り出す動作の主役は腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)です。腸腰筋が弱くなると膝と太ももが十分に上がらなくなり、遊脚期の足のクリアランスが低下します。

また、中殿筋・小殿筋(お尻の上部・外側の筋肉)が弱くなると、片足立ちの際に骨盤が下がってしまいます。歩行は「片足立ちの連続」であるため、中殿筋が弱ると骨盤が下がった側の足先が地面に引っかかるという直接的なつまずきの原因になります。

加齢に伴う骨盤前方回旋の増大と腰椎前弯の増強も関与しており、これは腹筋の筋力低下と股関節屈筋の硬直が組み合わさることで引き起こされます。

(引用;足がつまずく原因と対策について解説 | 足踏みケア
(引用;高齢者の歩行障害 | MSDマニュアル プロフェッショナル版

② 足関節背屈・膝関節屈曲のコントロール低下

歩行時のクリアランス確保は、股関節・膝関節の屈曲足関節の背屈という3つの関節の協調運動によって成り立っています。

特に足関節の背屈筋力(つま先を上げる力)の低下は、直接的なクリアランス低下につながります。また、膝関節と足関節の角度の「ばらつきの増大」がトゥークリアランスのばらつきを生じさせることが研究で示されており、この歩行周期ごとの角度の不安定さこそが、つまずきの根本原因となっています。

なお、産業技術総合研究所の研究(日本転倒予防学会誌掲載)では、転倒リスクを高い精度で評価するには「つま先の最大クリアランス」を確認することが適切である可能性が示されています。

(引用;歩行時のクリアランス低下の原因と改善について解説! | 歩行分析システム AYUMI EYE
(引用;歩行時のToe clearanceと足趾把持力について | J-STAGE

③ 体幹動揺・バランス機能の低下

体幹の安定性低下も、つまずきの重要な原因です。体幹動揺が大きいと、遊脚期の下肢筋活動の再現性が低下し、クリアランスのばらつきが生じやすくなります。

大阪府理学療法学術大会に報告された症例では、左ラクナ梗塞後の高齢男性が歩行時につまずきを繰り返していた原因として、体幹機能の低下・バランス機能の低下・左右の荷重非対称が関与していたことが報告されています。BBS(バーグバランススケール)が30/56点(転倒リスクあり)であり、10m歩行中に転倒に至るつまずきを2回認めたとされています。

また、足趾把持力(足の指で床をつかむ力)の低下も、立脚期の安定性を損ない間接的にトゥークリアランスのばらつきを増やすことが示されています。

(引用;麻痺側つまずきにより歩行自立が困難であった左ラクナ梗塞後の一症例 | 第33回大阪府理学療法学術大会
(引用;歩行時のToe clearanceと足趾把持力について | J-STAGE

歩行を「見て」つまずきリスクを評価する7つのチェックポイント

堺整形外科のリハビリテーション資料では、歩行観察によるつまずき・転倒リスク評価のチェックポイントとして以下の7項目が挙げられています。

  • 全体的にバランスは良いか?(前後左右のふらつきの有無)
  • 踵から接地しているか?(踵接地できない場合はつまずきの原因)
  • 足が前に出る際に床との十分なクリアランスがあるか?(外回りしていないか)
  • 片足支持時に十分な筋力を発揮できているか?(膝折れ・棒足はないか)
  • 歩行速度は適切か?(遅すぎても速すぎてもリスクになる)
  • 歩幅は適切か?(狭すぎる歩幅はすり足・つまずきのサイン)
  • 腕振りは左右対称か?(非対称は神経・骨関節の問題を示す)

これらを目視で確認する「観察的歩行分析」に加え、歩行分析デバイスによる定量的評価を組み合わせることで、より精度の高いつまずきリスクの把握が可能になります。

(引用;高齢者の身体機能低下とそのリハビリテーション(7)転倒予防 | 堺整形外科

歩行分析で「つまずきの原因を特定」するための評価ポイント

歩行分析によってつまずきの原因を特定する際は、以下のポイントに着目することが重要です。

歩行リズムのばらつき(変動係数)

つまずきの根本にある「クリアランスのばらつき」は、歩行リズムの乱れと連動しています。歩行分析でケイデンス(1分間の歩数)や歩幅の変動係数を計測することで、一歩一歩の動きの不安定さを定量的に把握できます。変動が大きい場合は、つまずきリスクが高いサインです。

推進力と体幹安定性

歩行の推進力が低下すると歩幅が狭まり、すり足に近い歩き方になります。MSDマニュアルでも「すり足は異常であり、つまずきの危険因子」と明記されています。推進力の数値化により、すり足傾向を客観的に検出できます。

また、体幹安定性(歩行中の上下・左右の体幹動揺)を評価することで、クリアランスばらつきの根本原因である体幹の問題を特定できます。

(引用;高齢者の歩行障害 | MSDマニュアル 家庭版

左右の荷重非対称性

左右の歩幅や立脚時間に差がある場合、どちらかの足のクリアランスが慢性的に不足している可能性があります。荷重の非対称性をデータで把握し、弱い側の筋力強化や姿勢改善に介入することが、つまずき予防の具体的な一手となります。

(引用;ふらつき歩行の原因疾患と高齢者のふらつく特徴とは? | 歩行分析システム AYUMI EYE

つまずき予防のためのリハビリ評価・介入のポイント

歩行分析でつまずきの原因を特定したら、以下のアプローチで介入します。

腸腰筋・足関節背屈筋の強化

足を前に振り出す力(腸腰筋)と、つま先を上げる力(前脛骨筋などの足関節背屈筋)を重点的に鍛えることが基本です。椅子に座った状態での膝の交互挙上運動や、足首の背屈エクササイズ(かかとを軸にしてつま先を上げる運動)が有効です。

体幹安定化トレーニング

体幹動揺を減らすためには、腹横筋・多裂筋などのインナーマッスルを強化するトレーニングが必要です。ドローイン(お腹を凹ませながら呼吸する方法)や四つばいでの対側手足挙上などが基本的なメニューです。体幹が安定することでクリアランスのばらつきが軽減し、つまずきにくい歩き方が実現します。

足趾把持力の向上

足の指で床をつかむ力(足趾把持力)を高めることで、立脚期の安定性が向上し間接的にクリアランスのばらつき軽減につながります。タオルギャザー(床に広げたタオルを足の指で手繰り寄せる運動)が代表的なトレーニングです。1日3セット・両足で継続することが推奨されています。

定期的な歩行評価によるモニタリング

つまずき予防のリハビリ効果を確認するには、定期的な歩行評価が不可欠です。初回評価のデータとの比較により、歩行リズムのばらつき・推進力・体幹動揺がどう変化したかを客観的に評価し、プログラムを継続的に見直していきましょう。

(引用;足がつまずく原因と対策について解説 | 足踏みケア

まとめ

今回は「なぜ”つまずき”が増えるのか?歩行分析で見つける転倒リスクの原因」についてご説明しました。

つまずきは「足が上がらなくなった」という単純な問題ではなく、腸腰筋・中殿筋の筋力低下足関節背屈のコントロール不足体幹動揺によるクリアランスのばらつきが複合的に絡み合って起きるものです。歩行分析によってこれらの原因を客観的に特定することで、「その人のつまずきの原因に合った」ピンポイントの介入が可能になります。

そこで最後に、つまずきリスクの原因特定に役立つ「AYUMI EYE」をご紹介します。

AYUMI EYEは、正しい歩行に必要な「バランス」「リズム」「推進力」を正確に測定・評価することができるデバイスです。

簡単かつ正確に歩行状態が分析できるため、歩行リズムのばらつき・体幹動揺・左右差・推進力の低下など、つまずきにつながる歩行パターンを数値で可視化し、リハビリ評価と介入計画の精度向上に貢献します。

ぜひ、歩行分析をつまずき予防の第一歩として活用し、利用者が安心して歩き続けられる支援を目指していきましょう。

 

(参考資料)

(引用;歩行時のクリアランス低下の原因と改善について解説! | 歩行分析システム AYUMI EYE
(引用;つまずきによる転倒に関連するクリアランスの研究 | 日本転倒予防学会誌 Vol.9
(引用;足がつまずく原因と対策について解説 | 足踏みケア
(引用;高齢者の歩行障害 | MSDマニュアル プロフェッショナル版
(引用;歩行時のToe clearanceと足趾把持力について | J-STAGE
(引用;麻痺側つまずきにより歩行自立が困難であった左ラクナ梗塞後の一症例 | 第33回大阪府理学療法学術大会
(引用;高齢者の身体機能低下とそのリハビリテーション(7)転倒予防 | 堺整形外科
(引用;高齢者の歩行障害 | MSDマニュアル 家庭版
(引用;ふらつき歩行の原因疾患と高齢者のふらつく特徴とは? | 歩行分析システム AYUMI EYE

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