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ここでは、お客様の声の一部をご紹介します。
2026/08/07
歩くだけで「脳の健康状態」がわかる?歩行分析と認知機能の意外な関係
目次
「最近、歩きながら話すのが難しくなった」「電話しながら歩いていたら段差に気づかなかった」——こうした経験を単なる「不注意」と思っていませんか?
実はこれは、脳の認知機能低下を示す重要なサインかもしれません。歩行と脳は私たちが想像するよりはるかに深くつながっており、歩き方を分析することで脳の健康状態を読み取ることができるという事実が、複数の研究で明らかになっています。
今回は、歩行分析と認知機能の関係を示す最新の研究知見と、日常で実践できる認知症予防のアプローチについてご説明します。
目次
歩行は「脳全体」で行われる高度な統合タスク
歩行は一見、足を前に出すだけの単純な動作に見えます。しかし実際には、前頭葉・頭頂葉・小脳・基底核・脳幹が常時連携して制御する、脳全体を使う高度な統合タスクです。
特に平地歩行において重要なのが「ワーキングメモリ」です。京都大学大学院と宇治武田病院の研究(理学療法科学掲載)では、会話しながら歩くなどの複合した課題を遂行するには「前頭前野を中心としたワーキングメモリ」が重要であることが示されています。
つまり歩行とは、「足を動かす」という運動課題と「周囲の状況を認識・判断する」という認知課題が同時並行で処理されている複雑な行為なのです。だからこそ、認知機能が低下すると歩行にも変化が現れやすいのです。
(引用;加齢による二重課題バランス能力低下と転倒及び認知機能との関連について | 理学療法科学 24(6)| J-STAGE)
歩行速度の低下は「認知症診断の12年前」から始まる
歩行データと認知機能の関係を示す研究の中で、特に衝撃的なのがオレゴン健康科学大学の研究です。
65歳以上の高齢者を対象に平均9年間追跡したこの研究では、軽度認知障害(MCI)と診断された人は、健康なグループと比べ歩行速度が毎年1秒あたり0.01mずつ遅くなっていくことが確認されました。
さらに驚くべきことに、歩行速度の低下はMCIと診断されるよりも平均して約12年前から現れていることが示されています。認知症やMCIを発症するはるか前から、歩行速度の低下という形でその予兆が歩き方に刻まれているのです。
また、健康長寿ネットが紹介する17の縦断研究のメタ分析では、歩行速度が遅い群は速い群と比べて認知機能低下のリスクが1.89倍、認知症のリスクが1.66倍であることが報告されています。この知見は米国・イタリア・スウェーデン・中国・日本・イスラエルの研究から得られており、人種を越えた普遍的な関係と考えられています。
(引用;歩行速度と認知機能の関係 | 大同生命)
(引用;歩行速度は認知機能低下を予測:人種を越えた普遍的意義 | 健康長寿ネット)
「歩きながら考える」でわかる脳の状態——デュアルタスク歩行
歩行分析と認知機能の関係を探る手法として、臨床現場で特に注目されているのがデュアルタスク歩行(二重課題歩行)の評価です。
デュアルタスク歩行とは何か
デュアルタスクとは、2つの課題を同時に遂行することです。歩行においては「歩く(運動課題)」と「計算する・しりとりをする・会話する(認知課題)」を同時に行う評価を指します。
認知症ねっとの解説によると、「話しかけると歩行が乱れたり立ち止まってしまう傾向」は、認知機能の疾患がある高齢者に知られており、デュアルタスク能力が高齢者の認知機能と関係していることは複数の研究で報告されています。
(引用;デュアルタスクで認知症予防 | 認知症ねっと)
「50代半ばから」低下が始まるという衝撃的な研究
デュアルタスク歩行の困難は、これまで65歳以上の高齢者特有の問題と考えられてきました。しかしハーバード大学医学部とヘブライ・シニアライフ社の研究グループが2023年に医学誌『Lancet Healthy Longevity』で発表した研究では、50代半ばから「ながら動作」が維持できなくなることが明らかになりました。
この研究はスペインの「バルセロナ脳健康イニシアチブ」研究に参加した40〜64歳の男女640人のデータを解析したもの。歩行のデュアルタスク能力の低下が認知機能低下と密接に関連しており、認知機能の低下は50代から始まっている可能性を示すものです。
(引用;ながら歩行が難しいは認知症のサイン?! | いわさき写真教室)
「デュアルタスクコスト」が認知機能低下を示す
デュアルタスク歩行では、通常歩行と認知課題同時歩行の速度差(デュアルタスクコスト)を計算します。この差が大きいほど前頭葉の実行機能が低下していることを示します。
大阪大学産業科学研究所の情報処理学会報告では、Montero-Odassoらの研究として、65歳以上のMCI患者を対象に通常の歩行とデュアルタスク歩行を比較した際、MCI患者では通常歩行に問題がなくても、デュアルタスク条件で顕著に歩行速度が低下することが示されたと報告されています。デュアルタスク歩行は、単なる歩行速度測定では見えない認知機能の問題を浮かび上がらせる鋭敏な評価ツールなのです。
(引用;デュアルタスク体験システムによる認知症高齢者データの収集とその解析 | 情報処理学会研究報告)
歩行分析データが示す「認知機能低下の3つのサイン」
歩行分析によって定量的に把握できる、認知機能低下と関連する代表的な歩行パターンの変化をご紹介します。
① 歩行速度の低下
最も古くから研究されている指標です。認知機能が低下し始めると、歩行に必要な注意資源が増加するため、歩行速度の維持が困難になります。HOMER IONの解説によると、認知機能低下群では加速度振幅の指標(RMS)が増大することが確認されており、これは歩行中の体幹の揺れが大きくなっていることを示します。さらに歩行速度の変動性(ストライド時間の変動 STV)にも認知機能低下が反映されることが先行知見で報告されています。
(引用;認知機能低下が歩行に及ぼす影響 | J-STAGE(理学療法学))
② 歩行リズムの乱れ(変動係数の増大)
健常な歩行ではストライド(1歩サイクル)の時間がほぼ一定に保たれます。しかし認知機能が低下すると、一歩ごとの時間が不規則になり変動が大きくなります。この「ばらつきの増大」は、前頭葉の実行機能低下が歩行リズムの自動制御に支障をきたしていることを反映しています。変動係数の増大は、歩行速度の平均値が正常でも現れることがあり、平均値だけでは見逃せる認知機能低下を捉えるのに有効な指標です。
③ デュアルタスク条件での歩行悪化
最も感度が高い指標が、デュアルタスク条件での歩行変化です。パーキンソン病患者においては60〜70%がデュアルタスク条件下で歩行能力が低下するとの報告があります。デュアルタスク時の歩行速度・歩幅・リズムの悪化度合い(デュアルタスクコスト)を数値化することで、単独歩行評価では捉えられない脳の注意・実行機能の問題を可視化できます。
(引用;デュアルタスクとは?具体例とトレーニング方法 | Footage訪問看護ステーション)
脳と歩行をつなぐメカニズム——なぜ歩き方に脳の状態が映るのか
歩行に脳の状態が反映される背景には、2つの主なメカニズムがあります。
注意資源の配分問題
人の脳が一度に使える「注意資源」には限りがあります。認知機能が低下すると、歩行そのものに多くの注意資源を必要とするようになります。その結果、他の課題(会話・計算・周囲の観察)と同時に行う余裕がなくなり、デュアルタスク時に歩行が崩れます。これは「注意資源の配分失敗」として説明されます。
前頭葉・基底核・小脳ネットワークの変化
歩行の自動制御には基底核・小脳が、歩行中の認知的判断には前頭前野が中心的に関与します。認知症の病理(アルツハイマー型や血管性認知症)は前頭葉機能を障害することが多く、それが歩行パターンの変化として現れます。デュアルタスク訓練を実施した被験者では、前頭葉・頭頂葉の活動増加が神経画像研究で確認されており、脳と歩行が相互に影響し合う関係にあることが示されています。
(引用;デュアルタスクとは?具体例とトレーニング方法 | Footage訪問看護ステーション)
デュアルタスク歩行を「予防」に活かす実践アプローチ
デュアルタスク歩行は評価ツールであるだけでなく、トレーニングとしても認知症予防に効果が示されています。
デュアルタスクトレーニングの具体的な方法
日常で取り入れやすいデュアルタスクトレーニングとして以下が挙げられます。
これらを週3〜5回・1回10〜20分継続することが推奨されています。認知症ねっとでは「日々の生活の中で行われている行動を意識して取り組むことで認知能力を向上させましょう」と紹介しており、特別な設備なく始められます。
(引用;デュアルタスクで認知症予防 | 認知症ねっと)
デュアルタスク訓練の効果エビデンス
Footage訪問看護ステーションの解説によると、複数のRCT・メタアナリシスで、デュアルタスクトレーニングによる歩行速度・バランス・転倒リスク低減・認知機能維持への効果が確認されています。また歩行速度については「デュアルタスク訓練群では、単一課題訓練群と比較してデュアルタスク条件下での歩行速度が有意に改善」(Fritz et al., 2015)したことも示されています。
さらにPDでは認知症発症リスクが一般集団の約6倍とされていますが、継続的な前頭葉への刺激が認知機能の維持に寄与する可能性も注目されており、デュアルタスクトレーニングは認知症予防と転倒防止を同時に実現できる介入として位置づけられています。
(引用;デュアルタスクとは?具体例とトレーニング方法 | Footage訪問看護ステーション)
まとめ
今回は「歩くだけで「脳の健康状態」がわかる?歩行分析と認知機能の意外な関係」についてご説明しました。
歩行は脳全体の統合的なアウトプットであり、歩行速度の低下は認知症診断の12年前から始まること、デュアルタスク歩行の困難は50代半ばから現れ得ることが研究で示されています。歩行速度・歩行リズムのばらつき・デュアルタスクコストという3つの歩行指標が、脳の健康状態を映す鏡として機能します。
そこで最後に、歩行データから脳の健康状態の変化を捉える「AYUMI EYE」をご紹介します。
AYUMI EYEは、正しい歩行に必要な「バランス」「リズム」「推進力」を正確に測定・評価することができるデバイスです。
簡単かつ正確に歩行状態が分析できるため、歩行速度・歩行リズムのばらつきを定期的に数値化して認知機能低下の早期サインを捉え、デュアルタスクトレーニングの効果測定や認知症予防プログラムの評価ツールとして活用できます。
ぜひ、歩行分析を「脳の健康状態を知るツール」として活用し、認知症予防と健康寿命延伸を目指していきましょう。
(参考資料)
(引用;加齢による二重課題バランス能力低下と転倒及び認知機能との関連について | 理学療法科学 24(6)| J-STAGE)
(引用;歩行速度と認知機能の関係 | 大同生命)
(引用;歩行速度は認知機能低下を予測:人種を越えた普遍的意義 | 健康長寿ネット)
(引用;デュアルタスクで認知症予防 | 認知症ねっと)
(引用;ながら歩行が難しいは認知症のサイン?! | いわさき写真教室)
(引用;デュアルタスク体験システムによる認知症高齢者データの収集とその解析 | 情報処理学会研究報告)
(引用;認知機能低下が歩行に及ぼす影響 | J-STAGE(理学療法学))
(引用;デュアルタスクとは?具体例とトレーニング方法 | Footage訪問看護ステーション)