歩行分析における関節の角度と動きについて徹底紹介

「歩行分析において、歩行中の各関節の角度や動きを知りたい」
「正常歩行において、関節角度や関節の動きのメカニズムを知りたい」
「観察による歩行分析で、関節角度や動きを把握することが難しい」

などの悩みを抱えるセラピストは多いと思います。

歩行分析において、関節の角度変化を観察だけで把握することは困難です。

しかし、正常歩行における関節角度や動きがどのような仕組みなのかを理解しておくことで、観察がしやすくなり、歩行分析力を高めることができます。

この記事では、歩行分析における関節の角度と動きについて、「運動の範囲」「発生するモーメント」「筋の活動」「機能的意義」という観察すべき4項目の重要性についてご紹介します。

歩行中の各関節の典型的な角度と動きの捉え方

歩行中の関節の角度と動きの理解は、観察における歩行分析において必要不可欠です。

歩行周期における各相の関節と筋肉の動きの概要を理解しておく必要があります。

それを理解した上で、さらに詳細な各関節の角度と動きを確認していく必要があります。

これらの情報は、健常歩行からのずれ(逸脱運動)を観察によって認識するための本質的な基礎となります。

理学療法士として、この本質的な基礎を身に着け、観察のトレーニングと練習を積むことにより、多くの病的歩行を識別することができます。

そしてさらに練習を積むことで、典型的な逸脱運動の分析をさらに深め、主問題を特定することができるようになります。

足関節と中足趾節関節

歩行における足関節と中足指節間関節の働きとして最も重要なのは、「蹴り出し力」です。

その蹴り出し力のポイントとなるのが「足底腱膜」です。

足底腱膜は踵骨から指節骨まで伸びていて、筋繊維が指の内在屈筋と同化している平らな組織(腱)であり、膝関節や腰部などに対するクッションの働きも担っています。

踵接地をした時、足の指が背屈することで足底腱膜が巻き上げられ、足のアーチが持ち上がります。

持ち上がったアーチは元に戻ろうとする力を生み出すため、これが前に進むためのバネのような役割を果たし、推進力となって蹴り出しに貢献しているのです。

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距骨下関節

距骨下関節(距踵関節)は、上方の距骨と下方の踵骨の間の3つの角度が異なる関節面から成り立っているという特徴があります。

この3つの関節面が一緒になって一軸性の動きが可能になり、その動きは3つのすべての面で観察できます。

荷重を支持する距骨下関節の機能は、特に足が床に安定して接地され支持面を維持している間、身体重量によって生じる回転力を受け止めることに大きく関与しています。

また、距骨下関節は、足関節の内反・外反に対する代償の役割を担っていることや、下肢のアライメントの変化に対して影響を及ぼすことが示唆されています。

福本貴彦 足関節のバイオメカニクス Jpn J Rehabil Med 2016;53:779-784

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膝関節

歩行における立脚期の膝関節は安定に重要で、大腿四頭筋が膝関節を制御しています。

さらに、立脚期における膝関節の重要な役割として、下腿三頭筋によって制御される下腿の動的な安定性があります。

遊脚期の膝関節の運動の範囲は、他のどの関節よりも大きいのが特徴です。

また、遊脚初期で必要となる屈曲のわずかな部分のみが筋活動の直接作用によるものであり、前遊脚期における足関節底屈筋群の残存的活動と股関節屈曲、下腿の慣性力がほとんどです。

つまり、正常な膝関節の運動は、立脚期においても遊脚期においても股関節や足関節の運動に依存しているのが特徴であると言えます。

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股関節と骨盤

歩行における股関節と骨盤の働きとして、どのような筋活動を行っているのかを、筋群別に説明していきます。

まず、股関節伸展筋群は「遊脚終期において遊脚肢にブレーキをかけ、立脚の準備をする」「遊脚期で発生する体幹と骨盤の前方への加速を抑制する」という大変重要な役割を担っています。

股関節外転筋群は、身体重心が中心に位置することによる骨盤の反対側への傾斜を防ぐために活動しています。

股関節屈筋群の活動は、遊脚期で脚が前に動く際にほんのわずかしか活動していません。

つまり、伸展筋群と外転筋群の役割が重要だと言えます。

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体幹

体幹は身体における中心部であり、上肢や下肢と連結しています。

そのため、歩行中の体幹は骨盤との協調性や肩・腕の動きと関連が大きいと言えます。

全身体重量の約2/3が臍から上にあるため、直立姿勢とバランス保持のための制御が特に必要となります。

また、加齢による歩行中の筋活動の変化を調べた研究によると、腹筋群の活動量は加齢に伴い低下するが、背筋群の活動は変化がないことが示されています。

体幹は、顕著に観察できる動きが少ないため、歩行分析において最も難しい部位です。

しかし、それぞれの歩行周期において、絶妙なバランスをとり、歩行の安定性に関与している重要な部分なのです。

三浦雄一郎 歩行時における体幹筋の筋活動 ―若年層と壮年層の比較― 

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歩行中の腕の機能は、下肢や体幹に比べて重要視されていない傾向があります。

しかし、対称的に交互に振られる腕の動きの程度は、人によって大きく異なり、歩行速度に強く影響されます。

歩行速度が大きくなればなるほど、腕の動きが大きくなります。

走行しているときは、肘の屈曲によって腕の振り子は短くなります。

一方、例えば足を引きずるように歩くなどの、穏やかな歩行のテンポにおいては、腕はほんのわずかに振れるか、全く振れません。

歩行時の体幹は骨盤の動きとは逆に運動し、腕は体幹の運動に従います。

遅い歩行速度では体幹の回旋は減少し、それに相応して腕の振りも小さくなります。

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歩行分析における「運動の範囲」

一般的に関節可動域と定義されているROM(range of motion)ですが、歩行分析の場合、関節に最大どれだけ可動域があるかではなく、あくまで歩行をしている際に関節がどれくらい動いているかに注目するため、ROMは関節の「動き」として捉えます。

関節のポジションは歩行中常に変化し、動きが素早いので観察するのは困難です。

一度に全ての関節を観察するのは難しいので、各関節ごとに、各歩行周期の相ごとにポイントをとらえて評価することが必要となります。

歩行分析における「発生するモーメント」

モーメントとは何を示す言葉でしょうか。

簡単に言えば、運動を起こす能力の大きさを示します。

立脚期における関節モーメントは、床反力計を用いて計測された床反力のデータに基づき推測することが可能です。

しかし、遊脚期はどうでしょう。

遊脚期は床反力計での計測が難しいため、関節に発生するモーメントを推測できません。

遊脚期は、逆動力学を用いて、外力によって遊脚期でも関節に作用する回転モーメントを確認します。

歩行中の立脚期と遊脚期それぞれの発生モーメントを理解することで、動きとして歩行を捉えることができます。

歩行分析における「筋の活動」

歩行分析において、筋の活動が重要なのは言うまでもありません。

それぞれの歩行周期において、筋の収縮形態も重要となります。

求心性収縮なのか遠心性収縮なのかはポイントとなります。

また、筋活動が生じるタイミングも理解しておかなければなりません。

歩行分析における各歩行周期の「機能的意義」

歩行分析において、各歩行周期ごとに特有の成果があり、その重要なポイントとしてクリティカルイベントがあります。

クリティカルイベントとは、各歩行周期ごとに重要な出来事として示され、例えば「衝撃吸収、単脚支持の安定性」「前方への動きの維持や足の離床」といった特有の機能です。

前額面、矢状面、水平面における観察面で、とても精妙な動きが足関節、膝関節、股関節と骨盤に生じます。

特に、矢状面における足関節、膝関節、股関節の動きはクリティカルイベントとの関連においてとても重要であるため、歩行分析においても重点を置く必要があります。

〈参考文献〉

1)Kirsten Gotz-Neumann (2014) 観察による歩行分析 原著 第1版第14刷 医学書院

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まとめ

歩行分析における関節の角度と動きについて「運動の範囲」「発生するモーメント」「筋の活動」「機能的意義」という観察すべき4項目の重要性について説明させて頂きました。

関節の角度や動きはそれぞれ違った特徴があります。

これらを理解し、分析を重ねることで、今までただ漠然と歩行を観察しているだけでは見えてこなかった問題点も捉えやすくなります。

明日からの臨床におけるヒントになれば幸いです。

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