PREMIUM COLUMN
2021/08/19
#筋肉・関節の歩行分析
目次
歩行分析において、正常とは違う異常運動を見極め、原因を追求することは大切です。
しかし、「正常とは何か違うけど、それが何なのか漠然としている」「体幹に異常がある場合、どのような歩行になるのか知りたい」などの悩みを抱える理学療法士さんは多いと思います。
漠然と見て歩行分析をするのは至難の業ですが、体の各関節ごとにどのような異常運動があるかを理解しておくと、歩行分析がしやすくなります。
そこで、この記事では、体幹の異常運動が歩行に与える影響を5つご説明致します。
歩行分析における体幹の代表的な異常運動として、以下の5つの異常運動が確認できます。
体幹の異常運動5つとは、前傾、後傾、側屈、前方回旋、後方回旋です。
体幹の異常運動が生じる原因として最も多いのは、下肢の可動域制限や筋力不足によって歩行に影響が出るのを防ぐための代償運動です。
バランスの均衡を保ったり、勢いを制御したりなど、代償運動としての役割は様々です。
代償運動としての役割を果たすことが多い体幹の異常運動では、その負荷によって背中に痛みが生じるという悪影響もあります。
歩行訓練では、この悪循環をどう打破するか、どこを調整すべきか、総合的に考えて訓練計画を立てなければなりません。
体幹の異常運動「前傾」の原因や歩行に及ぼす影響について確認していきましょう。
体幹前傾の原因は以下の通りです。
・大腿四頭筋の筋力不足の際に膝関節を伸展位で安定させるための意図的運動・視覚によるフィードバックにより感覚障害を代償するための意図的運動・足関節の過度の底屈に関わらず前方へ動くための意図的運動・体幹伸展の可動域制限・腹痛・股関節伸筋群の筋力不足を代償するために上肢で歩行補助具を使用・荷重応答期と立脚中期における過度の股関節屈曲の二次的現象
腹痛以外の原因は、代償動作や可動域制限といったものが多いので、「やむを得ず体幹前傾が生じる」といったイメージですね。
体幹前傾が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。
・エネルギー消費ならびに股関節と体幹の伸筋群に対する筋力要求の増大・背中の痛みの原因になることがある・安定性もしくは前方への動きを改善することがある
異常運動として捉えていた体幹前傾ですが、安定性や前方推進の改善といったメリットもあると言えるので、一概に「異常だから修正しなければ」とは言えないことがわかりますね。
体幹の異常運動「後傾」の原因や歩行に及ぼす影響について確認していきましょう。
体幹後傾の原因(荷重応答期、立脚中期)は以下の通りです。
・股関節伸筋群の筋力不足の際に筋発揮力が少なくてすむようにするための意図的運動・股関節の可動性のない屈曲拘縮に対する代償
これらはつまり、筋力不足や可動域制限によって体幹を正常に保てないことで生じる後傾であると言えます。
体幹後傾が歩行メカニズムに及ぼす影響(荷重応答期、立脚中期)は以下の通りです。
・エネルギー消費が増大することがある・前方への勢いの減少・背中の痛みの原因になることがある
つまり、歩行速度の低下、痛み、エネルギーを多く使うなどの影響があると言えます。
体幹後傾の原因(遊脚期)は以下の通りです。
・股関節屈筋群の筋力不足、または前方への動きを制御できないことに対する意図的運動・腰椎固定
体幹後傾が歩行メカニズムに及ぼす影響(遊脚期)は以下の通りです。
・エネルギー消費の増大・背中の痛みの原因になることがある
体幹の異常運動「側屈」の原因や歩行に及ぼす影響について確認していきましょう。
体幹側屈の原因(荷重応答期と立脚中期)は以下の通りです。
・股関節の痛みを避けるための意図的運動・股関節の外転筋群の筋力不足 ※いわゆる外転筋歩行・股関節の内転筋群の拘縮、すなわち股関節外転筋群の筋力不足と同じ結果が生じる。(骨盤は反対側が下方に下げられ、短縮した股関節内転筋群が重心を立脚肢から引き離す。バランスの崩れを補うために体幹は立脚肢側へ傾く。)
・硬い腸脛靭帯などの股関節の外側を構成する組織の拘縮。その際、足は外側にずれ、それによって支持面は増大する。同時に体幹の同側への側屈によって、身体重心は支持面に近づく。
・体幹上部の側彎による異常姿勢。脊椎の彎曲が体幹上部を側方へずらし、それによって静的な体幹側屈の形を生じさせる
・立脚肢の短縮・上肢で歩行補助具を使用
このように、体幹側屈には様々な原因があることが言えます。
特に、股関節内転筋と外転筋の影響は大きく、臨床でも多々観察される場面なので、しっかりと理解しておくことが必要となります。
体幹側屈の原因(遊脚期)は以下の通りです。
・不適切な股関節の屈曲にかかわらず遊脚肢側の骨盤をもち上げ、トゥクリアランスを得るための意図的運動。
つまり、体幹側屈することで下肢全体を引きずらずに持ち上げるための代償です。
・身体像(ボディイメージ)障害。いわゆる高次脳機能障害の領域になります。
体幹側屈が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。
・エネルギー消費の増大・前方への勢いの減少・遊脚肢側への体幹の側屈(プッシャー症候群)は歩行を困難にする
プッシャー症候群、つまりボディイメージの障害による体幹側屈の歩行障害の場合、評価は慎重に行わなければなりません。
そもそも体幹の可動域や筋力などに異常がないか、代償運動の要素を取り除いた状態での体幹をきちんと評価し、重心位置やバランスによってどう変化するのかを分析してはじめて、ボティイメージの障害による体幹側屈を判断しなければなりません。
体幹の異常運動「過度の前方回旋」の原因や歩行に及ぼす影響について確認しましょう。
過度の前方回旋の原因は以下の通りです。
・脚を前方へスイングするための意図的運動・骨盤の動きから体幹の動きを分離させる能力の欠如(たとえば片麻痺患者)・上肢による歩行補助具への過度の依存
過度の前方回旋が歩行のメカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。
・エネルギー消費が増大することがある・安定性が減少することがある
体幹の異常運動「過度の後方回旋」の原因や歩行に及ぼす影響について確認しましょう。
過度の後方回旋の原因は以下の通りです。
・骨盤の動きから体幹の動きを分離させる能力の欠如(たとえば片麻痺患者)・上肢による歩行補助具への過度の依存・立脚終期における足関節の過度の底屈と二次的現象
過度の後方回旋が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。
・エネルギー消費が増大することがある・前方の動きの減少
〈参考文献〉
1)Kirsten Gotz-Neumann (2014) 観察による歩行分析 原著 第1版第14刷 医学書院
体幹の異常運動が歩行に与える影響についてご説明致しました。
体幹は体の幹であり、人間の体の中で最も面積の広い部位です。
体幹の動きによって、歩行は大きく左右されるのですが、観察しにくいため分析が難しいという側面があります。
体幹の異常により、歩行にどのような影響があるのか、1つずつ整理し、分析の練習を積んでいく必要があります。
歩行分析において、異常運動を観察し評価を進めるために、まず健常歩行の機能ならびにメカニズムを正しく理解しましょう。
歩行の各相における関節と筋肉の動き、体幹の働き、運動の範囲、筋運動、歩行分析のポイントにて、健常歩行における体幹についてご紹介していますので、こちらもご参照下さい。
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2021/08/19
【歩行分析】体幹の異常運動5つ、原因と歩行のメカニズムに及ぼす影響
#筋肉・関節の歩行分析
目次
歩行分析において、正常とは違う異常運動を見極め、原因を追求することは大切です。
しかし、「正常とは何か違うけど、それが何なのか漠然としている」「体幹に異常がある場合、どのような歩行になるのか知りたい」などの悩みを抱える理学療法士さんは多いと思います。
漠然と見て歩行分析をするのは至難の業ですが、体の各関節ごとにどのような異常運動があるかを理解しておくと、歩行分析がしやすくなります。
そこで、この記事では、体幹の異常運動が歩行に与える影響を5つご説明致します。
目次
歩行分析における体幹の異常運動5つとは
歩行分析における体幹の代表的な異常運動として、以下の5つの異常運動が確認できます。
体幹の異常運動5つとは、前傾、後傾、側屈、前方回旋、後方回旋です。
体幹の異常運動が生じる原因として最も多いのは、下肢の可動域制限や筋力不足によって歩行に影響が出るのを防ぐための代償運動です。
バランスの均衡を保ったり、勢いを制御したりなど、代償運動としての役割は様々です。
代償運動としての役割を果たすことが多い体幹の異常運動では、その負荷によって背中に痛みが生じるという悪影響もあります。
歩行訓練では、この悪循環をどう打破するか、どこを調整すべきか、総合的に考えて訓練計画を立てなければなりません。
1.体幹の異常運動「前傾」
体幹の異常運動「前傾」の原因や歩行に及ぼす影響について確認していきましょう。
体幹前傾の原因(荷重応答期、立脚中期)
体幹前傾の原因は以下の通りです。
・大腿四頭筋の筋力不足の際に膝関節を伸展位で安定させるための意図的運動
・視覚によるフィードバックにより感覚障害を代償するための意図的運動
・足関節の過度の底屈に関わらず前方へ動くための意図的運動
・体幹伸展の可動域制限
・腹痛
・股関節伸筋群の筋力不足を代償するために上肢で歩行補助具を使用
・荷重応答期と立脚中期における過度の股関節屈曲の二次的現象
腹痛以外の原因は、代償動作や可動域制限といったものが多いので、「やむを得ず体幹前傾が生じる」といったイメージですね。
体幹前傾が歩行のメカニズムに及ぼす影響
体幹前傾が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。
・エネルギー消費ならびに股関節と体幹の伸筋群に対する筋力要求の増大
・背中の痛みの原因になることがある
・安定性もしくは前方への動きを改善することがある
異常運動として捉えていた体幹前傾ですが、安定性や前方推進の改善といったメリットもあると言えるので、一概に「異常だから修正しなければ」とは言えないことがわかりますね。
2.体幹の異常運動「後傾」
体幹の異常運動「後傾」の原因や歩行に及ぼす影響について確認していきましょう。
体幹後傾の原因(荷重応答期、立脚中期)
体幹後傾の原因(荷重応答期、立脚中期)は以下の通りです。
・股関節伸筋群の筋力不足の際に筋発揮力が少なくてすむようにするための意図的運動
・股関節の可動性のない屈曲拘縮に対する代償
これらはつまり、筋力不足や可動域制限によって体幹を正常に保てないことで生じる後傾であると言えます。
体幹後傾が歩行のメカニズムに及ぼす影響(荷重応答期、立脚中期)
体幹後傾が歩行メカニズムに及ぼす影響(荷重応答期、立脚中期)は以下の通りです。
・エネルギー消費が増大することがある
・前方への勢いの減少
・背中の痛みの原因になることがある
つまり、歩行速度の低下、痛み、エネルギーを多く使うなどの影響があると言えます。
体幹後傾の原因(遊脚期)
体幹後傾の原因(遊脚期)は以下の通りです。
・股関節屈筋群の筋力不足、または前方への動きを制御できないことに対する意図的運動
・腰椎固定
体幹後傾が歩行のメカニズムに及ぼす影響(遊脚期)
体幹後傾が歩行メカニズムに及ぼす影響(遊脚期)は以下の通りです。
・エネルギー消費の増大
・背中の痛みの原因になることがある
3.体幹の異常運動「側屈」
体幹の異常運動「側屈」の原因や歩行に及ぼす影響について確認していきましょう。
体幹側屈の原因(荷重応答期と立脚中期)
体幹側屈の原因(荷重応答期と立脚中期)は以下の通りです。
・股関節の痛みを避けるための意図的運動
・股関節の外転筋群の筋力不足 ※いわゆる外転筋歩行
・股関節の内転筋群の拘縮、すなわち股関節外転筋群の筋力不足と同じ結果が生じる。
(骨盤は反対側が下方に下げられ、短縮した股関節内転筋群が重心を立脚肢から引き離す。バランスの崩れを補うために体幹は立脚肢側へ傾く。)
・硬い腸脛靭帯などの股関節の外側を構成する組織の拘縮。その際、足は外側にずれ、それによって支持面は増大する。同時に体幹の同側への側屈によって、身体重心は支持面に近づく。
・体幹上部の側彎による異常姿勢。脊椎の彎曲が体幹上部を側方へずらし、それによって静的な体幹側屈の形を生じさせる
・立脚肢の短縮
・上肢で歩行補助具を使用
このように、体幹側屈には様々な原因があることが言えます。
特に、股関節内転筋と外転筋の影響は大きく、臨床でも多々観察される場面なので、しっかりと理解しておくことが必要となります。
体幹側屈の原因(遊脚期)
体幹側屈の原因(遊脚期)は以下の通りです。
・不適切な股関節の屈曲にかかわらず遊脚肢側の骨盤をもち上げ、トゥクリアランスを得るための意図的運動。
つまり、体幹側屈することで下肢全体を引きずらずに持ち上げるための代償です。
・身体像(ボディイメージ)障害。いわゆる高次脳機能障害の領域になります。
体幹側屈が歩行のメカニズムに及ぼす影響
体幹側屈が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。
・エネルギー消費の増大
・前方への勢いの減少
・遊脚肢側への体幹の側屈(プッシャー症候群)は歩行を困難にする
プッシャー症候群、つまりボディイメージの障害による体幹側屈の歩行障害の場合、評価は慎重に行わなければなりません。
そもそも体幹の可動域や筋力などに異常がないか、代償運動の要素を取り除いた状態での体幹をきちんと評価し、重心位置やバランスによってどう変化するのかを分析してはじめて、ボティイメージの障害による体幹側屈を判断しなければなりません。
4.体幹の異常運動「過度の前方回旋」
体幹の異常運動「過度の前方回旋」の原因や歩行に及ぼす影響について確認しましょう。
過度の前方回旋の原因
過度の前方回旋の原因は以下の通りです。
・脚を前方へスイングするための意図的運動
・骨盤の動きから体幹の動きを分離させる能力の欠如(たとえば片麻痺患者)
・上肢による歩行補助具への過度の依存
過度の前方回旋が歩行のメカニズムに及ぼす影響
過度の前方回旋が歩行のメカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。
・エネルギー消費が増大することがある
・安定性が減少することがある
5.体幹の異常運動「過度の後方回旋」
体幹の異常運動「過度の後方回旋」の原因や歩行に及ぼす影響について確認しましょう。
過度の後方回旋の原因
過度の後方回旋の原因は以下の通りです。
・骨盤の動きから体幹の動きを分離させる能力の欠如(たとえば片麻痺患者)
・上肢による歩行補助具への過度の依存
・立脚終期における足関節の過度の底屈と二次的現象
過度の後方回旋が歩行のメカニズムに及ぼす影響
過度の後方回旋が歩行メカニズムに及ぼす影響は以下の通りです。
・エネルギー消費が増大することがある
・前方の動きの減少
〈参考文献〉
1)Kirsten Gotz-Neumann (2014) 観察による歩行分析 原著 第1版第14刷 医学書院
まとめ
体幹の異常運動が歩行に与える影響についてご説明致しました。
体幹は体の幹であり、人間の体の中で最も面積の広い部位です。
体幹の動きによって、歩行は大きく左右されるのですが、観察しにくいため分析が難しいという側面があります。
体幹の異常により、歩行にどのような影響があるのか、1つずつ整理し、分析の練習を積んでいく必要があります。
歩行分析において、異常運動を観察し評価を進めるために、まず健常歩行の機能ならびにメカニズムを正しく理解しましょう。
歩行の各相における関節と筋肉の動き、体幹の働き、運動の範囲、筋運動、歩行分析のポイントにて、健常歩行における体幹についてご紹介していますので、こちらもご参照下さい。