歩行におけるリハビリテーションの役割。理学療法士と作業療法士別に紹介

「歩行において、リハビリテーションはどんな役割があるの?」
「理学療法士と作業療法士は、それぞれどのように歩行に関わっているの?」
「歩行改善に向けて、リハビリテーションで期待できる効果を知りたい」

など、歩行とリハビリテーションについて知りたい方は多いと思います。

人間にとって歩行は、生活する全ての動作に必要な移動手段です。

人間の生活を包括的にアプローチをするのがリハビリテーションの役割であり、理学療法士や作業療法士は、そのための技術士です。

この記事では、理学療法士と作業療法士別の、歩行におけるリハビリテーションの役割についてご紹介します。

歩行におけるリハビリテーションの役割

リハビリテーションの役割は、「障害を持った場合の不自由さに対して、元の生活に戻るためにアプローチをする」「障害を持っていてもその人らしく、可能な限り最高の水準まで引き上げた生活が送れるようにアプローチをする」ことにあります。

歩行におけるリハビリテーションの役割として、歩行能力の向上だけでなく、歩行能力が向上することによって生活がどう良くなるのか、どんな工夫を施すべきかなど、さまざまな面からトータル的に歩行を捉え、アプローチしていくことが重要となります。

理学療法士

リハビリテーションにおいて理学療法士は、いわば「身体の土台作り」のプロです。

人間が動作を開始・遂行するためには、身体の土台がとても大切です。土台作りができていないと、スムーズで滑らかな動きは不可能です。

その土台作りとして、関節可動域や筋力、基本的動作(寝返り・起き上がり・立ちしゃがみなど)や歩行が重要となります。

特に歩行においては、作業療法士よりも専門的で得意分野であると言えます。

では、アプローチの詳細を一つ一つ説明していきます。

歩行訓練

障害によって歩行動作に問題が生じてしまったり、1人では安全に歩けなくなった場合、その問題点を運動学的・生理学的な面から正確に捉え、効果的なアプローチを行います。

まずは転倒せず安全に1人で歩行できることを目指し、さらに効率の良い歩行(速さやバランスが大切)を目指していきます。

必要に応じて歩行補助具(杖や歩行器、押し車など)を利用したり、後述する補助具(義肢装具)を使用することにより、歩行能力を高める練習を行います。

関節可動域訓練

歩行をするためには、関節の十分な動きの確保、つまり柔軟性が大切です。

加齢により関節が硬くなったり、麻痺により関節の動く範囲が狭くなってしまったり。

さまざまな要因で関節可動域に制限が生じます。

歩行において特に、床面に近い足関節、膝関節の可動域はとても重要です。

関節可動域訓練は、身体の土台作りに重要な訓練の1つです。

筋力トレーニング

歩行における関節可動域、柔軟性の大切さをお伝えしましたが、それだけでは歩行することはできません。

関節を動かし、身体を支持して推進するためには筋力が必要です。

加齢により筋力が徐々に低下してきたり、麻痺によって筋肉を発揮する力が不十分となったり、痛みがある場合も十分な筋力の発揮が難しくなってしまいます。

歩行において、特に臀筋群の筋力は大変重要となります。

大臀筋中臀筋などの筋力トレーニングもまた、身体の土台作りに重要な訓練になります。

補助具などを使った訓練

補助具とは読んで字の如く、歩行などの動作を補助する器具のことを示します。

例えば、腓骨神経麻痺(つま先を上にあげる動作が麻痺する)による下垂足(歩行時につま先が持ち上がらずに垂れ下がり、つまずきや捻挫の原因となる)の場合、背屈装具とよばれる足首を良い角度に固定する装具を使用し、歩行訓練をします。

加齢による歩行時のつまずきを防止する、最近話題の背屈促進ソックスも補助具の1つと言えます。

作業療法士

理学療法士が「身体の土台作り」のプロなら作業療法士は「身体の応用対策」のプロです。

人間はさまざまな動作や作業をするために、目で見て耳で聞いて手に触れて、頭の中で情報を処理・判断し、状況に応じて心と身体をコントロールし、微調整を繰り返しています。

このように、生きるためには色々な応用能力が必要です。

つまり、土台だけがしっかりしていても生活に応用が効きません。

その応用能力に対し、さまざまな方法を用いてアプローチするのが作業療法士の役割です。

漠然とした説明で分かりにくいと思うので、以下に具体例を説明していきます。

作業療法

作業療法は、細かい巧緻動作の獲得や、自助具(機能障害を補い、能力を獲得する便利なグッズ)の適合に加え、認知機能や精神機能の面にも,作業を通じて関わっていきます。

歩行における作業療法士の役割は、歩行能力自体の改善に限らず、専門的な観点から「歩行は生活に必要な移動手段」と捉えて,理学療法士と協同してアプローチすることです。

つまり、移動するためには行く先の場所を計画し、路面に適した靴を選び、狭い道があれば身体の動かし方を工夫し、周囲に気を配りながら歩くなど、生活や社会に応用できる能力が必要となります。

このように、運動機能だけでなく、認知機能や精神機能からも歩行を捉える所に作業療法の特徴があると言えます。

生活訓練

人が生活するためには「食事」「身だしなみ」「排泄」「更衣」「入浴」が重要です。

作業療法士はこの日常生活動作に対して、何ができないのかを詳細に分析します。

そして、できない部分を繰り返し練習して習得の手助けをします。

必要によって自助具を適合したり(例:足に手が届かず靴下が履けない場合、かがまずに靴下を履けるグッズを利用する)、環境面を工夫したり(例:膝が深く曲がらず和式便所が使えなくなった場合、洋式便所に変更する)など、さまざまな方法でアプローチします。

料理訓練

先程ご紹介した日常生活動作だけでなく、さらに応用的な動作の練習も行います。

その1つに料理訓練があります。

料理は、長時間立っている能力、素早く移動する能力、メニューの計画、火の元や包丁などの危険の管理、細かい作業としての指先の動きなど、とても難易度の高い動作です。

作業療法では、実際にキッチンで患者さんと一緒に料理を行い、家に帰るための予行演習をします。

AYUMI EYEで歩行分析

AYUMI EYEは、3軸加速度センサーモジュールとiPad(iPhone)専用アプリを用いて、歩行時の加速データに基づき歩行機能を「推進力」「バランス」「リズム」の3点から分析するデバイスです。

AYUMI EYEで歩行分析をすると、「リハビリ訓練の効果をわかりやすく説明したい」「歩行分析は観察項目が多すぎて評価がしずらいので、効率的に測定したい」「運動習慣を身に着けてほしい」などの課題を解決してくれます。

AYUMI EYEによる客観的で定量的な歩行分析は、転倒予防や健康寿命の延伸だけでなく、患者さんとのコミュニケーションを円滑にし、歩行へのモチベーション向上に寄与します。

iOSアプリで詳細な歩行分析ができることは、歩行のプロである理学療法士および作業療法士にとってまさに、鬼に金棒です。

AYUMI EYEの歩行分析で獲られる客観的データは、今後のリハビリテーション界において大変有益であることは間違いありません。

まとめ

理学療法士と作業療法士別の歩行におけるリハビリテーションの役割、AYUMI EYEによる歩行分析についてご紹介させて頂きました。

これからリハビリテーションで歩行改善に向けて取り組む方々にとって、少しでも有益な情報であったなら幸いです。

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歩行推進力とその改善方法 著者:佐藤洋平(EHA監修)
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