パーキンソン病による歩行障害の特徴と対策方法について

パーキンソン病は60歳以上の高齢者のうち、約100人に1人の割合で発症するといわれるほど身近な病気です。しかしこの病気は実に様々な症状が現れることから、慣れないうちは対応に戸惑うことも少なくありません。

「特徴的な歩容について教えて欲しい」
「患者さんの歩行訓練が思うように進まない」
「自宅復帰に向けてどのように環境調整をしたら良いのかわからない」

実際にはこのような悩みを抱える方が多いようです。

そこでこの記事では、パーキンソン病の特徴的な歩容とその対応策について解説します。これを読むことで、歩行分析だけでなく歩行時の環境設定や歩行器具についての考え方も理解することが出来ますよ。

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、脳内物質であるドーパミンの不足によってスムーズな身体の動きが阻害される進行性の難病です。代表的な症状として、

・自発的な動きが少なくなる「無動(寡動)」
・筋肉がこわばる「固縮」
・安静時に手足が震える「安静時振戦」
・姿勢を立て直すことが難しくなる「姿勢反射障害」

の4つが挙げられます。これらの症状によって様々な歩行障害が生じます。

パーキンソン病による歩行障害の特徴

特徴的な歩行障害は以下の5つです。

すくみ足

すくみ足とは両足が床に貼り付いたように前に出しにくくなる現象です。

一歩目がなかなか踏み出せなかったり、歩いている途中でも目標物に近づくと足が前に出なくなってしまいます。

突進現象

突進現象は歩いているうちにどんどん加速し、前につんのめってしまう現象です。

体重がつま先に偏っているため、踵が浮いていることもあります。

前傾姿勢

首が下がり脊柱が屈曲する前傾姿勢は、パーキンソン病の特徴的な立位姿勢の一つです。

突進現象を助長する原因でもあります。

小刻み歩行

小刻み歩行は歩幅が小さくすり足になるのが特徴的です。

立脚初期の踵接地が生じにくく足関節の動きが低下します。

方向転換による転倒

パーキンソン病では特に方向転換の際に転倒する方が多く見受けられます。

これは姿勢反射障害の影響で、バランスを崩した時の姿勢修正が正常に行えないためです。歩容とは少し違うかもしれませんが、方向転換が苦手というのも特徴的な症状なのでしっかり覚えておきましょう。

パーキンソン病による歩行動作の対策

歩行障害については動作時にちょっとした工夫をしたり姿勢を意識することでぐんと歩きやすくなることがあります。

それぞれの歩容に合わせた対策について、順番に見ていきましょう。

すくみ足

一歩目が出ない時は「1、2、1、2・・・」とリズムをとりながら歩いたり、床に横断歩道のようにテープを貼って目印を作ることで足が出しやすくなります。

また、足を後ろに一歩下げてから前に踏み出すことでスムーズに歩き始められることもあります。

目標物に近づいた時に足が出にくくなる場合には、視線をさらに前に向けるように意識したり、つかまる場所や足を置く場所を示しておくことですくみ足が出にくくなります。

突進現象、小刻み歩行

歩く前に顔を前に向けて、背筋はなるべく伸ばしておきましょう。

歩く時は踵から先に着地するように意識すると突進現象や小刻み歩行を抑えることができます。

方向転換

その場でくるっと回るのではなく、あえて大回りをする方が安全です。

また2つ以上のことを同時に行うとバランスを崩しやすくなるため、後ろから話しかけたり荷物を持ったりせずに「向きを変える」ということに集中させるのも重要です。

パーキンソン病による歩行環境の対策

歩行環境の対策を考えることは、転倒予防の面や、残存機能を生かして自立した生活を支える上で大変重要な観点になります。

つかまれる場所を確保

手すりを設置したり家具の高さを揃えることで、歩行中につかまれる場所を用意しましょう。

こうするとバランスを崩したときに支えになるだけでなく、患者さん自身が「ここは安全な場所だ」と認識でき歩行時の恐怖心や精神的ストレスが軽減されます。

注意しなければいけない物が増えたりストレスがかかると症状がより強く出現してしまうので、なるべく安心して歩きに集中できる環境を作ることが重要です。

つまずかないための工夫

パーキンソン病では足の上がりが少ないため、つまずかないための環境作りが特に重要になります。

具体的にはマット類を敷かないようにする、電気コードを整理する、裾の長いズボンは避ける、スリッパをはかない、低い段差にはスロープをつけて段差をならす、等の工夫を考えましょう。

ちなみに階段のような高い段差の方が足が上がりやすいという人が多いので、ある程度の高さのある段差はそのまま残しておいた方が良い場合もあります。

一人一人の生活スタイルに合わせて必要な環境整備を行うようにしましょう。

方向転換は最小限に

なるべく方向転換をしなくて済むよう、通路に物を置かないようにしたり家具の配置を考えましょう。

それでも頻繁に方向転換が必要な場所については転倒リスクが高いため対策が必要です。

例えば、足をつく位置に目印をつけておくことで、大回りしながら向きを変えるように動きを誘導することができます。

また肘掛けがない椅子を用意すれば、向きを変えずにどの方向からでも座りやすくなります。動線を把握し、どの場所でどのような動きが必要なのかを評価していきましょう。

パーキンソン病による器具による歩行の工夫

パーキンソン病は進行性の病気であるため、症状の進行にともない徐々に独歩での移動が不安定になってきます。

最初は歩行器具の使用を嫌がったりまだ必要性を感じないという方も多いので、それぞれの器具の特徴をおさえた上で患者さんへの説明もしっかりできるようにしましょう。

一般的にはT字杖や多点杖を使うことが多いですが、中にはすくみ足の症状が出やすい人向けに“パーキンソンステッキ“と呼ばれるものもあります。

これは、持ち手に付いているレバーを操作すると足元にバーが飛び出してくる仕組みになっており、これを踏み越えることで一歩目が出しやすくなる工夫がされています。

杖はやや長めに調整することで前傾姿勢を抑えられることがあるので、機能面だけでなく高さや重さなども考慮して処方するようにしましょう。

歩行器

パーキンソン病の方に向けた歩行器として、抑速ブレーキ付き歩行器があります。この歩行器は前方に加速しすぎるのを防ぐために自動で速度調整ができる仕組みになっています。

突進現象や前傾姿勢で前方に重心が偏りすぎてしまう人にとってはとても安心感があるでしょう。

また車輪のついている歩行器やシルバーカーに比べると、一回一回持ち上げる必要のあるピックアップ歩行器の方がリズムがとりやすいという場合もあります。

早い段階から歩行器の練習も行っておき、症状の進行にスムーズに対応できるようにしておきましょう。

まとめ

パーキンソン病の特徴的な歩行障害と対応策について解説してきました。

この内容を学んだ上で、実際に患者さんの歩行を分析してみて下さい。きっと前よりもっと幅広い視点で訓練内容を考えることが出来るようになっているはずです。

同じ病気でも、出ている症状や生活の環境は人それぞれ異なります。一人一人の歩行をしっかりと分析・評価し、柔軟な対応策がとれるようにしていきましょう。

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