体重免荷トレッドミル歩行訓練(BWSTT)の特徴や効果、使い方、対象者について紹介

トレッドミルは、障害者のリハビリテーションの機器として開発され、医療機関で広く使われています。

トレッドミルを利用した歩行分析において、そのメリットや使用上の注意点、平地歩行との違いの分析に関して説明させていただきます。

トレッドミルを利用した歩行訓練に関して、体重免荷トレッドミル歩行訓練(body weight support treadmill traning:BWSTT)が近年注目されており、その歩行能力改善効果は多々報告されています。

トレッドミルを利用した歩行訓練(BWSTT)は脳卒中ガイドラインでも推奨されている治療の一つです。

この記事では、トレッドミルを利用した歩行訓練(主にBWSTT)について、その効果や対象者、使い方をご紹介させて頂きます。

体重免荷トレッドミル歩行訓練(BWSTT)とは

体重免荷トレッドミル歩行訓練(body weight support treadmill traning:BWSTT)とは、身体を上方へ吊り上げ、体重を免荷した状態でトレッドミル上を歩行するものです。

つまり、ハーネスと牽引装置によって上方から下肢にかかる荷重量を制限した状態でトレッドミル上を歩行する訓練のことを示します。

免荷によって下肢の荷重量が減ること、運動負荷を減らせること、転倒の危険がなく歩行に対する不安を軽減できること、反復して同一の刺激が可能であること等から、効率の良い運動学習へ繋がる可能性があり、注目されています。

体重免荷トレッドミル歩行訓練の特徴

BWSTTが歩行能力改善に効果があると考えられるようになった根拠のひとつに、歩行に関わる中枢パターン発生機(Central Pattern Generator:CPG))の存在があります。

末梢からの刺激入力でCPGを賦活させ、歩行様の筋活動を得ると同時に、CPGからの上行性ニューロンの活動を通して、脳内ネットワークの再構築が期待できます。

さらに出血や梗塞により障害を負った部位、もしくは残存部位の賦活も期待できます。

つまり、BWSTTによる受動的なステッピングによって、CPGからの運動出力を誘発し、運動学習を促すための課題志向型のトレーニング効果があると言えます。

すなわち、歩行様の筋活動や下肢の振り出しの運動学習を促すことのできる訓練なのです。

体重免荷トレッドミル歩行訓練の効果

BWSTTの効果として、歩行速度の改善があげられ、これは体重を免荷することで歩容が改善し、1歩行周期に変化が生じ、より大きな歩幅での歩行を反復して学習できると考えられています。

さらに、BWSTTを亜急性期から施行すれば、平地歩行での練習よりも早期歩行自立と高い在宅復帰率が期待されるという報告もあります。

そして、BWSTTと非BWSTTを比較し、Time up and Go test(TUG)や歩行速度の改善があるとの報告や、BWSTTと床上での歩行訓練はともにバランス能力と下肢機能を改善させるが、BWSTTのみ歩行時の股関節伸展の可動域拡大の効果があったとの報告もあります。

体重免荷トレッドミル歩行訓練の対象者

BWSTTの対象者は、脳卒中患者のみならず、脊髄損傷やパーキンソン病、人工股関節置換術患者などの歩行障害を有する患者に対して有用性が報告されています。

また、慢性期脳卒中の患者だけでなく、回復期の患者への有効性も確認されており、さらには虚弱高齢者を対象とした研究においても、歩行能力改善の効果が報告されています。

体重免荷トレッドミル歩行訓練の使い方

BWSTT装置は、さまざまな会社の製品があり、使い方はその製品によって違います。

胸部にハーネスを取り付け、バンジーケーブルを利用して体を上方へ懸垂し、免荷を得るものの場合、装着するために要する時間は約1分です。

〈参考文献〉
1)土田将之.定速型および変速型トレッドミル歩行における不歩行不安定性の比較.理学療法学34(5):607-613,2019
2)佐藤瑞騎.回復期脳卒中片麻痺患者に対する部分免荷型トレッドミル歩行練習の即時効果ー非免荷型トレッドミル歩行練習との比較ー.理学療法学第45巻第3号197~202.2018
3)楠正和.虚弱高齢者における空気圧式体重免荷トレッドミルの歩行分析.Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy Vol,5,No.2:53-59,2015
4)高尾敏文.慢性期脳卒中片麻痺患者に対する体重免荷トレッドミル歩行練習の即時効果および経時効果.理学療法学第38巻回3号180~187頁.2011

まとめ

トレッドミルを利用した歩行訓練(主にBWSTT)について、その効果や対象者、使い方をご紹介させて頂きました。
BWSTTによる歩行能力改善の効果は明らかであることがご理解頂けたと思います。

しかし、実際に医療機関での使用はまだ一般的ではなく、取り入れている病院は少ないのが現実です。

これを機に、効果的な歩行訓練としてBWSTTに注目してみるのはいかがでしょうか。

 

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