小脳性運動失調「酩酊(様)歩行」の分析とリハビリ

「酩酊(様)歩行」は、脊髄小脳変性症(SCD)の小脳性運動失調の症状で見られる歩行です。

今回は、小脳性運動失調の症状である酩酊(様)歩行について、詳しくご説明します。

また、小脳性運動失調の立位・歩行の分析を行い、酩酊(様)歩行のリハビリに役立つポイントについてもご紹介します。

こちらの記事を参考にしていただき、リハビリにお役立てください。

脊髄小脳変性症(SCD)とは?

小脳は、後頭部の下側にある脳の一部で、体を動かす重要な役割を担っています。

主に、運動と知覚の統合、平衡感覚、筋肉の緊張と動きの調節を行います。

小脳を中心とした神経の変性によって生じる疾患を総称して「脊髄小脳変性症(SCD)」と言います。

脊髄小脳変性症には「遺伝性」と「非遺伝性(孤発性)」の2種類があります。

また、非遺伝性には「皮質性小脳萎縮症」と「多系統萎縮症」に分けられます。

遺伝性脊髄小脳変性症の多くは、神経変性の原因となる遺伝子が突き止められています。

一方、非遺伝性脊髄小脳変性症に関しては、はっきりとした原因は分かっていません。

SCDに共通する「小脳性運動失調」の症状について

SCDに共通する症状として、小脳性運動失調(小脳失調)があります。

小脳失調とは、複数の筋肉をバランスよく協調させて動かすことができなくなることを言います。

具体的には、下記のような症状が現れます。

  • ・箸を使うのが難しい
  • ・字を書くのが動かしにくい
  • ・ふらついて歩きにくい
  • ・呂律が回らない

また、排尿障害や便秘などの自律神経障害も現れます。

さらに歩く際には不安定になり、両足を開き、体幹を揺らしながら歩きます。

この歩き方が、千鳥足で酔ったように見えることから「酩酊(様)歩行」と呼ばれています。

感覚や神経支配の障害について

正常状態の体では、常に平衡感覚や運動感覚が働き、自らの姿勢や歩行を正しく保つことができます。

一方、酩酊(様歩行の患者のように、感覚や神経支配に何らかの障害が生じた場合は、以下のような状態になります。

  • ・自らの姿勢が保てない
  • ・歩き方に異変が見られる
  • ・起立時に開脚した姿勢
  • ・一方向に回転する旋回運動がみられる
  • ・頭の傾斜
  • ・眼振

など、症状の出方は多岐にわたります。

上記いずれの症状も、多くは神経組織に異常があると言えます。

また、神経組織の障害や病変はリハビリを行っても完治しなかったり、後遺症が残ったりすることがあります。

小脳性運動失調の立位・歩行分析

小脳性運動失調での立位や歩行は、非常に不安定な状態です。

立位・歩行でのそれぞれの体の状態をご説明します。

立位の状態

支持基底面を大きくして、動揺を防ぐような姿勢や動作を取りやすくなります。

また、過剰に力を入れることで動揺を抑制しようとし、足を広げて基底面の拡大を行います。

さらに、体幹を前傾させて腰背部筋で動揺の抑制を行います。

そのため、背部筋及び上部体幹・頭頸部に過剰な代償が起こります。

もし、体の中心部もしくは肢の近位部の安定性が低下していると、動揺性はより大きく出現します。

上記の条件で動揺が抑制されない場合は、上部体幹や頭頸部筋の過剰性を利用して、体全体を固定することで抑制しようとします。

歩行の状態

歩行の際、立位姿勢から回旋の少ない歩幅の小さい歩行をとります。

もしくは、大きく振り出して体幹の過剰代償で止める歩行が認められます。

大きく振り出す時は、体をコントロール出来ずに振り出してしまう場合があり、酩酊歩行になります。

また、腰背部などの過剰な代償が得られにくい脳性麻痺の失調型の場合は、体幹を左右に側屈させます。

そして、体の重みを利用しながら下肢に重みを乗せることで、動揺を抑制する場合があります。

この場合、左右に大きく体を振りながらの歩行となり、歩行時の下肢は伸展位を維持しながら振り出すことが多くなります。

「小脳性運動失調」患者へのリハビリポイント

主に、リハビリの際は次のようなことを念頭に置いて行います。

  • ・動揺性を含む失調症状の出現する場所と、それに対する固定場所の関係を十分に理解する
  • ・小脳性・迷路性・脊髄性・大脳性やその他末梢性など失調症のタイプを良く理解する
  • ・失調と代償の関係として、頭頸部・体幹・四肢を考える
  • ・的確な動作観察・分析が重要
  • ・失調症が出現する時の代償方法とそのときの姿勢や動作の特徴を把握する
  • ・体幹下部の動作時の安定性を作る
  • ・重力を利用して安定性を図る
  • 以上のことを含めて、動作獲得のため治療プログラムの立案と実行を行います。

また、患者と家族への動作指導を行うことが求められます。

まとめ

今回は「小脳性運動失調「酩酊(様)歩行」の分析とリハビリ」について解説しました。

酩酊(様)歩行のリハビリには、動揺性や体の振り幅など、正しい歩行状態と明確なデータ比較を行うことが効果的です。

また、リハビリでの動作観察や分析には、細かいデータが非常に重要と言えます。

その点、AYUMI EYEは歩行バランスの能力分析や解析に長けており、酩酊(様)歩行の現在の状態をデータで簡単に観察・分析することができます。

ぜひ、AYUMI EYEを使って、酩酊(様)歩行の歩行訓練に活用しながら、リハビリの成果を上げていきましょう。

(参考資料)
後藤 淳 失調症患者における問題点の予測
金沢大医療技術短期大学部 立野 勝彦 失調症のリハビリテーション
医療法人社団 樹々会 日吉台病院 – ふらつき(運動失調)
社会福祉法人 恩賜財団 済生会 – 脊髄小脳変性症
難病情報センター - 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)


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