歩行における母趾球の役割とは

歩き方や走り方について教えられるとき、「親指(もしくは親指の付け根)で蹴るように」と言われたことがありませんか。

実際にやってみてもどことなく違和感があるのではないでしょうか。

では、親指(もしくは親指の付け根)で蹴るとはいったいどういうことなのでしょうか。

今回は歩行と足の親指、そして蹴り出しの力の関係についてまとめていきます。

親指の付け根、母趾球って何?

足の親指は母趾と呼ばれ、その付け根にあたる丸いふくらみを母趾球(ぼしきゅう)と呼びます。

手にも同様に母指球が存在し、漢字を分けて使う場合が多いです。

足は人間が立っているときに唯一地面に接する部位であり、歩行や走行では衝撃を吸収する必要があります。

そのため、足には3つのアーチ構造が備わっているのですが、母趾球と踵をむすぶ内側縦アーチと母趾球と小趾球をむすぶ横アーチは衝撃吸収にとても重要な役割を担っています。※1

 

歩行における母趾球の役割

足が地面についているとき、地面から足に力が働きます。

これを床反力と言いますが、地面と足との接触面に働く力の分布の中心点を足圧中心と呼びます。※2

歩行中の足圧中心は、まず踵がついたところから始まり、土踏まずを避けるように足裏の外側(小趾側)を通過し、蹴り出しの前に大きく内側へ移動、母趾球を通って最終的には母趾と第2趾の間を抜けていくと言われています。※3

つまり、この母趾球への荷重はその後の蹴り出しにとって非常に重要な意味を持ちます。 実際に、足圧中心が外側に移動することによって蹴り出しの力が弱くなるという報告も存在します。※4

早く走るために「親指で蹴る」は正解?

地面を強く蹴り出すためには、母趾球に体重がのっていることが重要だと説明しました。

では、「親指で蹴るように」もしくは「親指の付け根に体重をかける」ことが地面を強く蹴り出すコツなのでしょうか。

実はここに大きな落とし穴があります。

母趾球に体重がのらないと力強く蹴り出せないのはうそではありませんが、母趾球に体重が加わるのは踵が地面についてから足圧中心が移動した結果なのです。

つまり、母趾球に体重をのせようとするもしくは親指で強く地面を蹴ろうとするのではなく、結果的にそうなっていることが理想と言えます。

母趾球へ体重をのせることばかりに意識が向いてしまうと、歩行中の足圧中心の軌道が内側へ移動するおそれがあり、母趾球に加わるストレスが増える可能性があります。

母趾球の中には母趾種子骨と呼ばれる小さな2つの骨があり、この骨への度重なるストレスは母趾種子骨障害と呼ばれる母趾球の痛みにつながります。

また、母趾球への過度なストレスは足裏のタコや外反母趾の原因の1つともされており、注意が必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は足裏にある親指の付け根にあたる、母趾球と歩行の関係性について説明しました。

歩く時の蹴り出しには、母趾球へ正しく体重が加わる必要がありますが、母趾球へ体重をかけることや母趾で地面を強く蹴ることばかりに気が向いてしまうとよろしくありません。

足裏に正しく体重を加えて、楽しく歩きましょう。

※1 増川らー足部内側アーチの違いが歩行周期 歩行中の足圧中心に与える影響 理学療法科学33(2) 2018
※2 内田ー身体重心と足圧中心 理学療法ジャーナル52(7) 2018
※3 江戸らー歩行時における足圧中心軌跡と距骨下関節の可動性の関係 理学療法科学33(1) 2018
※4 佐々木らー末梢動脈疾患患者における歩行中の足底圧分布特性の検討 心臓リハビリテーション26(2) 2020


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