PREMIUM COLUMN
2021/02/18
#異常歩行
目次
臨床場面において、歩行に問題点を見出し、その改善を目標に掲げる機会は決して少なくありません。
歩行分析を行う上で、正常歩行に対する理解を深めておく事は必須と言えますが、異常歩行の特徴を抑えておく事も重要となります。
今回、多種多様な異常歩行パターンの中でも、特に代表的な異常歩行の種類と特徴を12個紹介していきます。
正常歩行と比較して特徴的な歩容を示し、その特徴によって以下に紹介する異常歩行の種類に分類されます。
異常歩行の原因は多岐に渡り、脳血管・運動器疾患に起因するタイプや痛み等の症状の影響を受けるタイプ、心因性と判断されるタイプ等に大別されます。
また一見すると特徴的な歩容でも、その人の姿勢や歩き方の癖が歩容に反映されているだけで、異常歩行に含まれないケースも多くあります。
一口に異常歩行と言っても、どの様に異常なのか具体的に説明するのは難しいものです。イメージした異常歩行と以下に紹介する特徴を擦り合せてみると思考の整理にも有用です。
早速、代表的な異常歩行の種類と特徴を紹介していきます。
ぶん回し歩行の特徴は、遊脚側の下肢を外側方向に振り回す様に見える点です。主に脳血管障害後の痙性片麻痺が影響します。
麻痺側下肢は痙性の影響で股・膝関節を屈曲しにくく、円滑に下肢を振り出す事が出来ません。下肢を振り出す際は、骨盤を側方挙上する事で下肢を引き上げる様に振り出します。
足関節の内反尖足を認める場合は、クリアランスを確保するため下肢を外側方向に振り回す傾向が強まります。
はさみ足歩行は痙性対麻痺に多く、股・膝関節は軽度屈曲位で、両膝を擦り合せる様に歩きます。
股関節内転筋の筋緊張が高く、股関節の内転が強まってしまうため、下肢を振り出す際に両膝が交差する状態になります。
小刻み歩行は高齢者に多く、軽度の前屈姿勢をとります。最大の特徴は歩幅の小ささで、ケイデンスが高くても、歩行速度は遅い傾向にあります。足尖より接地して、足底を床に擦る様にして歩きます。
前屈姿勢と足尖での接地が相まって、特に前方への転倒リスクに注意を要します。
酪酎歩行はふらふらと酔っ払っている状態に似ており、体幹が大きく動揺するため、両足を大きく開いて(wide based)バランスをとって歩く特徴があります。
引きずり歩行は遊脚初期〜中期にかけ、足底を床に引きずる様に歩く点が特徴です。
片麻痺や変形、痛み等が生じている側の下肢を引きずって歩きます。
痙性歩行は、上位運動ニューロンの障害で引き起される痙性麻痺による歩行障害です。
麻痺側の下肢は伸展・内反尖足位の傾向が強く、足尖を床に引きずる様に歩きます。
下肢を振り出す際は、股関節を軸として外側方向に半円を描く様に下肢を振り出します。この時、下肢の重さを訴える事が多々あります。
失調歩行は側方への動揺が目立ち、非常に不安定です。両足を広く開いて(wide based)、バランスの保持を図る傾向があります。
四肢・体幹の円滑な運動が障害されており、一定の歩幅で歩く事が出来ません。また、時おり立ち止まってバランスの修正を試みる様子が散見されます。
鶏歩(けいほ)は、下垂足(drop foot)で遊脚期の足関節背屈が不足している時、その代償として足を高く持ち上げ、前方に投げ出す様に踏み出す歩き方です。
片側性の場合、健側に比べて患側下肢の挙上が高くなるため、観察にて発見が容易とされています。
よちよち歩行は、腰周りの筋肉が弱いため安定感に欠け、下肢を振り出す際に骨盤を左右に傾け、上半身~腰を揺らし、下肢を重そうに振り出しながら歩行します。
上部体幹の動きは大きい反面、歩幅は小さく、やや足を開いて接地する点も特徴です。
奇怪歩行は、全身もしくは局所性の不随意運動が原因となって生じる歩行障害です。
歩行時に不規則で連続的な不随意運動が発生する事で一見奇怪に見えるため、奇怪歩行と呼ばれています。
ヒステリー性歩行は、主に解離性(転換性)障害で認める症状の一つで、多様な歩き方を示します。
例えば、立つ事も出来ない失立や、歩く事が出来ない失歩を呈する事もあります。
一定の距離を歩くと下肢、特に腓腹筋部に痛み、痺れ、疲労感が蓄積し、歩行困難になります。
休息する事で、上記の症状が治まって歩ける点も特徴です。
主な原因として血管性と脊髄性の原因が予測されます。
今回は代表的な異常歩行の種類と特徴を紹介させていただきました。
日頃の臨床場面において、目にする頻度の高い歩行パターンもあれば、一度も経験する事のない歩行パターンもあるでしょう。
しかし、いざ担当者として関わる機会を得た時、正常歩行は勿論のこと、異常歩行のイメージも持って歩行分析を行う事が出来れば、リハビリテーション展開に必要な情報をより多く収集できると言えます。
十人十色の歩行を多角的に捉えるために、是非参考にしていただければ幸いです。
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2021/02/18
代表的な異常歩行の種類と特徴を12個紹介!
#異常歩行
目次
臨床場面において、歩行に問題点を見出し、その改善を目標に掲げる機会は決して少なくありません。
歩行分析を行う上で、正常歩行に対する理解を深めておく事は必須と言えますが、異常歩行の特徴を抑えておく事も重要となります。
今回、多種多様な異常歩行パターンの中でも、特に代表的な異常歩行の種類と特徴を12個紹介していきます。
目次
異常歩行とは?
正常歩行と比較して特徴的な歩容を示し、その特徴によって以下に紹介する異常歩行の種類に分類されます。
異常歩行の原因は多岐に渡り、脳血管・運動器疾患に起因するタイプや痛み等の症状の影響を受けるタイプ、心因性と判断されるタイプ等に大別されます。
また一見すると特徴的な歩容でも、その人の姿勢や歩き方の癖が歩容に反映されているだけで、異常歩行に含まれないケースも多くあります。
代表的な異常歩行の種類と特徴
一口に異常歩行と言っても、どの様に異常なのか具体的に説明するのは難しいものです。イメージした異常歩行と以下に紹介する特徴を擦り合せてみると思考の整理にも有用です。
早速、代表的な異常歩行の種類と特徴を紹介していきます。
1.ぶん回し歩行
ぶん回し歩行の特徴は、遊脚側の下肢を外側方向に振り回す様に見える点です。主に脳血管障害後の痙性片麻痺が影響します。
麻痺側下肢は痙性の影響で股・膝関節を屈曲しにくく、円滑に下肢を振り出す事が出来ません。下肢を振り出す際は、骨盤を側方挙上する事で下肢を引き上げる様に振り出します。
足関節の内反尖足を認める場合は、クリアランスを確保するため下肢を外側方向に振り回す傾向が強まります。
2.はさみ足歩行
はさみ足歩行は痙性対麻痺に多く、股・膝関節は軽度屈曲位で、両膝を擦り合せる様に歩きます。
股関節内転筋の筋緊張が高く、股関節の内転が強まってしまうため、下肢を振り出す際に両膝が交差する状態になります。
3.小刻み歩行
小刻み歩行は高齢者に多く、軽度の前屈姿勢をとります。最大の特徴は歩幅の小ささで、ケイデンスが高くても、歩行速度は遅い傾向にあります。足尖より接地して、足底を床に擦る様にして歩きます。
前屈姿勢と足尖での接地が相まって、特に前方への転倒リスクに注意を要します。
4.酪酎歩行
酪酎歩行はふらふらと酔っ払っている状態に似ており、体幹が大きく動揺するため、両足を大きく開いて(wide based)バランスをとって歩く特徴があります。
5.引きずり歩行
引きずり歩行は遊脚初期〜中期にかけ、足底を床に引きずる様に歩く点が特徴です。
片麻痺や変形、痛み等が生じている側の下肢を引きずって歩きます。
6.痙性歩行
痙性歩行は、上位運動ニューロンの障害で引き起される痙性麻痺による歩行障害です。
麻痺側の下肢は伸展・内反尖足位の傾向が強く、足尖を床に引きずる様に歩きます。
下肢を振り出す際は、股関節を軸として外側方向に半円を描く様に下肢を振り出します。この時、下肢の重さを訴える事が多々あります。
7.失調歩行
失調歩行は側方への動揺が目立ち、非常に不安定です。両足を広く開いて(wide based)、バランスの保持を図る傾向があります。
四肢・体幹の円滑な運動が障害されており、一定の歩幅で歩く事が出来ません。また、時おり立ち止まってバランスの修正を試みる様子が散見されます。
8.鶏歩(けいほ)
鶏歩(けいほ)は、下垂足(drop foot)で遊脚期の足関節背屈が不足している時、その代償として足を高く持ち上げ、前方に投げ出す様に踏み出す歩き方です。
片側性の場合、健側に比べて患側下肢の挙上が高くなるため、観察にて発見が容易とされています。
9.よちよち歩行
よちよち歩行は、腰周りの筋肉が弱いため安定感に欠け、下肢を振り出す際に骨盤を左右に傾け、上半身~腰を揺らし、下肢を重そうに振り出しながら歩行します。
上部体幹の動きは大きい反面、歩幅は小さく、やや足を開いて接地する点も特徴です。
10.奇怪歩行
奇怪歩行は、全身もしくは局所性の不随意運動が原因となって生じる歩行障害です。
歩行時に不規則で連続的な不随意運動が発生する事で一見奇怪に見えるため、奇怪歩行と呼ばれています。
11.ヒステリー性歩行
ヒステリー性歩行は、主に解離性(転換性)障害で認める症状の一つで、多様な歩き方を示します。
例えば、立つ事も出来ない失立や、歩く事が出来ない失歩を呈する事もあります。
12.間欠跛行(かんけつはこう)
一定の距離を歩くと下肢、特に腓腹筋部に痛み、痺れ、疲労感が蓄積し、歩行困難になります。
休息する事で、上記の症状が治まって歩ける点も特徴です。
主な原因として血管性と脊髄性の原因が予測されます。
まとめ
今回は代表的な異常歩行の種類と特徴を紹介させていただきました。
日頃の臨床場面において、目にする頻度の高い歩行パターンもあれば、一度も経験する事のない歩行パターンもあるでしょう。
しかし、いざ担当者として関わる機会を得た時、正常歩行は勿論のこと、異常歩行のイメージも持って歩行分析を行う事が出来れば、リハビリテーション展開に必要な情報をより多く収集できると言えます。
十人十色の歩行を多角的に捉えるために、是非参考にしていただければ幸いです。